ミルクは紅茶よりも先に入れるか、後に入れるか?

正しい紅茶の淹れ方というのは、常に議論の的になってきました。最大の議論のひとつとして、「ミルクは紅茶よりも先に入れるか、後に入れるか?」という問題があります。

世界規模でみると、アメリカ人はミルクを後で入れるといわれています。それ以外の国ですと、英国を中心として、このミルク論争というのはずっと行なわれているようです。日本でも、紅茶好きの人であれば、一度はこの「ミルクが先か、後か?」という問題に関心を持たれた方は多いのではないでしょうか?

ジョージ・オーウェルの主張:ミルクをあとで入れる

英国の作家、ジョージ・オーウェルは熱狂的な紅茶好きであることで知られています。

1946年に発売された「イーブニング・スタンダード誌」の紅茶に関するエッセイの中で、オーウェルは紅茶をティーカップに入れたあとに、ミルクを入れることを主張しました。

オーウェルの主張は、「ミルクをあとで入れるのは、ミルクの量を調節できるから」ということです。

英国王立化学協会の主張:ミルクを先に入れる

科学者たちもミルク論争に参加しました。英国王立化学協会は、完璧な一杯の紅茶の淹れ方について公式見解を発表しました。その見解によれば、ミルクは紅茶よりも先に入れることを勧めています。

その後、アンドリュー・スティープリー博士は、英国王立化学協会の見解を検証しました。スティープリー博士の検証をまとめると次のようになります。

ミルクを先に入れると、熱い紅茶が少しずつ加わることで、ミルクの温度はゆっくりと上がっていく。牛乳タンパクは変性しないことになり、風味が保持される。

ミルクを後で入れると、牛乳タンパクに変性が起きてしまう。すると、ミルクが固くなり、クリーミーさが失われて、硫黄臭さが加わり香りも悪くなる。

しかし、物理学者たちは英国王立化学協会の意見に反対しています。英国物理学会は、紅茶を淹れる際の最も重要な要因は、水の温度であり、ミルクではないという見解を示しています。

ティーカップとの関連:昔の陶器は紅茶の熱に弱かった

歴史的にみると、ミルクは紅茶よりも先にティーカップに入れられていました。それは紅茶の熱によってティーカップが割れることを防ぐためだったといわれています。富裕な階級の人々だけが、高級で割れにくい陶磁器を使うことができました。一方で、貧しい人々は安くて割れやすい陶器を使うしかなかったのです。昔使われていた安い陶器の場合、紅茶をティーカップに直接注ぐと、割れてしまうことがありました。ミルクを最初にティーカップに注いでおくことで、熱い紅茶を冷ますことができ、結果として、ティーカップが割れることを防ぐことができたのです。

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