コーヒーハウスからティーショップへ(英国の喫茶文化の変遷)

英国の喫茶文化のはじまりは、コーヒーハウスにありました。英国では17世紀に入ると、茶、コーヒー、チョコレートが広がっていきました。この三つの中で一番最初に普及したのがコーヒーでした。ロンドンの商業地帯には続々とコーヒーハウスが誕生していったのです。

Coffee House, Clerkenwell
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コーヒーハウスの登場

英国で最初にコーヒーハウスがオープンしたのは1650年のことでした。それは、オックスフォードでユダヤ人が二日酔いを醒ます薬としてコーヒーを販売したのが最初とされています。

トーマスギャラウェイは英国のロンドンでコーヒーハウスを経営していました。そして、1657年に、初めてお茶を自分の店で販売しました。ロンドンのロンバート街のエクスチェンジアレーにあった彼の店では、その場で客にお茶を飲ませると同時に、茶葉も販売されました。その後、トーマスギャラウェイのコーヒーハウスは200年以上も続いたといわれています。

Interior of a Coffee House, Published for William Pearman Library, 1819
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こうして、コーヒーハウスはお茶を販売する主要な場所になっていったのです。17世紀の終わりまでには、2000軒ものコーヒーハウスがロンドンにあったといわれています。コーヒーハウスでは、コーヒーのほかにお茶やチョコレートも販売されていました。また、集まった人々がビジネスの情報交換をしたり、政治を議論する場でもありました。1680年代には、ペニーポストという郵便配達業者が、郵便の集荷や配達をする場所としてコーヒーハウスを利用したといわれています。

それぞれのコーヒーハウスには特徴があって、銀行家や政治家、作家など、いろいろな種類の客を引き寄せました。

保険会社として有名なロイズは、エドワード・ロイドのコーヒーハウスで保険業者たちが集まっていたために、ロイズという名前がついたといわれています。

この時期には、コーヒーハウスは女人禁制の場所でした。女性たちはお茶を家で飲んでいたのです。女性たちがお茶を外で飲むようになったのは18世紀になって、ティーガーデンが発達してからのことです。

当時のお茶は珍品だったので、ヨーロッパではとても価値のあるものでした。たとえていえば、お茶は絹や陶磁器、チョコレートと同じくらい価値のあるものだったのです。また、お茶が高価で入手しにくいものだったこともあって、富裕な階級の人々にとっては高い地位の象徴でもありました。

1706年になると、トーマス・トワイニングがロンドンのストランド街に「トムの店」をオープンさせました。

18世紀にあったコーヒーハウスは現代の英国のパブを思い起こさせるものです。コーヒーハウスには大きな暖炉があって、その暖炉でコーヒーの入ったポットや、チョコレート、ティーポットなどを温めていました。客に対してはアルコール飲料もしばしば提供されました。

ティーガーデンの登場

17世紀の終わりになると、最初のティーガーデンがオープンしました。しかし、ティーガーデンが一般的になるのは18世紀に入ってからです。ティーガーデンの人気が高まるにつれて、ほとんどのコーヒーハウスが店を閉じていきました。ティーガーデンでは、入場料が無料でした。その後、入場料を徴収するようになりましたが、お茶は無料でした。ティーガーデンでは、人々は散歩したり、乗馬やボートを楽しんだり、お茶を飲んだり、コンサートや花火を見たりしました。しかし、18世紀の終わりには、ティーガーデンの人気は衰えていきました。

ティーガーデンが流行らなくなった理由としては、ティーガーデンでは酒類が販売されなかったために、男性たちの人気をなくしてしまったことがあげられます。また、家庭で女性主体のアフタヌーンティーの習慣が一般化したということもあります。

1840年以降、ほんのわずかなティーガーデンがロンドンに残っていたという記録がありますが、その後、完全に姿を消してしまいました。

ティーショップのはじまり

19世紀の終わりには、お茶がコーヒーの人気を上回るほどになっていました。1864年には、ロンドンブリッジ駅にあったパン屋で最初のティーショップがオープンし、その後、50店舗もの様々なティーショップがオープンしました。1894年には、ピカデリーに有名な「Lyons」というティーショップもオープンしました。

The Tea Shop, from The Book of Shops, 1899
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ティーショップでは温かい飲み物や冷たい飲み物が出されるだけではなく、甘いお菓子や、風味があって香辛料のきいた食べ物も出されました。また、ティーショップで音楽が演奏されることもありました。エドワード王時代は、ティーショップの絶頂の時期だったといわれています。

また、1912年にアルゼンチンから英国にタンゴが入ってくると、ティーダンスと呼ばれる踊りが流行し始めました。ティーダンスは一世を風靡しましたが、1920年代になるとその人気は衰えていきました。

1950年代になると、ティーショップは流行らなくなりました。お茶よりもコーヒーが注目されるようになったのです。しかし、お茶は消滅しませんでした。そして、1980年代になると、ティーショップは再び人気を得るようになりました。

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